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広島税理士のひとりごと『ふるさと納税と寄付金』

2018/01/10 [WED]

 総務省の「ふるさと納税に係る返礼品の送付等について」(総税市第28号 平成29年4月1日)で、返礼割合を30%以下にするよう通達が発出されました。
 これを機会に「寄付」について考えてみたいと思います。
 日本で「寄付」は、金銭や財産などを公共事業、公益・福祉・宗教施設などへ無償で提供することであり、被災地・被災民へ送られる義捐金・義援金。教育機関や医療機関などへの寄贈、宗教施設に対する寄進等も含まれます。
英語では「donation」が同義語になると思われますが、英語圏ではその他類似の行為として、①フィランソロピー(philanthoropy)慈善活動という慈善的な目的を援助するため、金銭、物品、時間、労力をささげる行為で、今ではよりよいものを広めたり、人生の質を高めたりすることを目的とした、利他的・奉仕的な活動全般を指します。フィランソロピストとしては、ロックフェラー家、カーネギー家、ビル・ゲイツなどがあげられます。次に、②チャリティー(charity)博愛・同胞愛または事前の精神に基づいて行われる公益的な活動・行為若しくはそれを行う組織を指します。これらの多くは宗教的な背景を持っています。身体障害者や高齢者に対する社会福祉、貧困地域の飢餓救済、紛争地域の難民救済、災害・自己などの犠牲者や遺族に対する支援活動の形態をとり、かかる費用は寄付・寄進によって支弁されます。また、③ボランティア(volunteer)は、自発性、無償性、利他性に基づく活動でしたが、近時的には、先駆性、補完性、自己実現性等がの概念が付加されてきている。
 本来の寄付は反対給付を伴わない片務契約であり、無償での提供が原則です。
 ふるさと納税は地方税法第37条の2にあり、「地方税法等の一部を改正する法律」(平成20年法律第21条)により、従前の地方税法に挿入付加されることで導入された、個人住民税の寄付金税制が拡充されたものです。その後、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設され、また返礼品競争等で利用者が急増することとなり、過熱を鎮静化するため総務省の通達が発出されました。
この様に考えると、我が国と欧米諸国での寄付の考え方に大きな違いがあることがおわかりと思いますが、バックグランドにある宗教間の違いであるように思います。仏教では、神様・仏様が慈悲を施す。キリスト教では、お金を持っている人が、貧しい人に分け与えるべき」に基づき寄付が日常的に根付いており、日本では特別なものとの認識があるようです。
但し,Noblesse oblige(貴族が義務を負う)の精神は飛鳥の時代から、続いているようです。聖徳太子の建立した法隆寺、藤原道長の建立した平等院、恩賜財団等にそれを見ることが出来ます。

「慈悲」
 この言葉は仏教用語で、「仏や菩薩が人々に楽を与え(=慈)、苦しみを取り除くこと(=悲)を意味しています。これから派生して、現代的には「思いやり」あるいは「情け」という意味で使用されます。我が国での寄付の原点が仏教感にあるといいましたが、神仏が施す慈悲が人々にとっての寄付の受贈そのものであったと思います。
 サンスクリット語では、慈は(maitri)で、本来は「友人」「友情」の意味であり、しかも、特定の人に対する友情ではなく、あらゆる人々に平等に友情を持つことを言います。悲は(karuna)で「抜苦」「憐れみ」を意味しますが、大乗仏教では他者の苦しみを救いたいと願う意味です。
 キリスト教での人々への「憐憫」の思いとは異なります。仏教においては、一切の生命は平等であり、それゆえ怨親なく相手の幸福を願う心こそが、仏教の思想となっており、donationとは異なります。

 

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